IAEA包括報告書に関するプレスブリーフィング(2023年7月26日)
令和5年8月16日
日本政府が2021年4月に発表した基本方針を受け、日本政府と国際原子力機関(IAEA)との間で、2021年7月8日に署名された、ALPS処理水の取扱いの安全性に係るレビューの包括的な枠組みに関する付託事項(TOR)に基づき、これまでIAEAによる一連のレビューが行われてきました。2023年7月4日、これらのレビューを総括する包括報告書が、グロッシーIAEA事務局長から岸田総理に手交され、IAEAから公表されました。IAEA包括報告書に対する香港市民の理解を醸成するため、日本政府は2023年7月26日に担当者を香港に派遣し、香港プレス向けにブリーフィングを開催しました。
1.岡田大使による冒頭挨拶
香港、日本、第三国報道機関関係者の皆様、在香港日本国総領事の岡田健一でございます。
このたびは御多忙の折、東京電力福島第一原子力発電所のALPS処理水の安全性レビューに関するIAEA包括報告書に関する在香港日本総領事館主催説明会に御参加いただき、誠にありがとうございます。
2021年4月に、日本政府はALPS処理水の処分に関する基本方針を発表し、その後、2回にわたって香港のプレスの皆様にALPS処理水に関する説明会を開き、処理水の安全性について、科学的根拠に基づく説明を行って参りました。
残念なことに、香港市民の間では「ALPS処理水」を「汚染水」と誤解するなど、依然として混同が生じており、IAEAの包括報告書発表後も、日本食を楽しんで頂いている香港の皆様の間で不安が広がっていると承知しています。我々としては、引き続き科学的根拠に基づく正確な情報、特に100頁を超えるIAEAの包括報告書の内容につき正確かつ丁寧にお伝えする必要性を改めて痛感しているため、本日は、7月4日にIAEAから公表された包括報告書の概要を経済産業省の宮下参事官にご説明いただき、城市大学の日引教授に科学者の立場からコメントいただきます。それに先だって、わたくしから、IAEAという国際機関の位置づけ及び包括報告書の重要性について、まず簡単にご説明したいと思います。
IAEAという機関は、1956年に中国を含む世界176カ国の合意を得て作成されたIAEA憲章に基づいて活動する機関です。グロッシーIAEA事務局長も述べているとおり、原子力分野ではIAEAが唯一の権限をもつ国際機関です。
IAEA憲章3条6には、「安全上の基準を設定し」、「いずれかの国の要請を受けたときは、その国の原子力の分野におけるいずれかの活動に対して、その基準が適用されるように措置を執ること」と規定されています。つまり、今回のIAEA包括報告書で述べられる「国際的な安全基準」というのは、中国を含む176カ国が同意してIAEAが設定、採用してきた安全基準であり、その安全基準を適用して今回の包括報告書は作成されたものであるということです。
IAEAは本年7月4日に包括報告書を発表し、(1)ALPS処理水の海洋放出は関連の国際安全基準に合致しており、人および環境への影響は無視できる程度である、(2)今後も引き続きIAEAはレビューを続け、福島第一原発に常駐オフィスの設置を行う、と表明しました。IAEAのグロッシー事務局長は、処理水の最後の一滴が安全に放出し終わるまでIAEAは福島にとどまると表明しています。
わたくしからは、もう一点、2011年の原発事故以降の日本政府の努力と国際的な動向についてお話ししたいと思います。原発事故の後、55カ国・地域が日本産食品に対する輸入規制措置を導入しました。日本は、農地の除染、飼育管理などの対策を徹底し、出荷規制により基準値を超過する食品を流通させない体制を構築してきました。このような日本の努力を受けて、7月13日にはEUが規制撤廃を公表し、8月3日付で撤廃されれば、これまでに55カ国・地域のうち44カ国・地域が規制を撤廃することになります。
これとは対照的に香港政府も過去10年以上にわたり77万回の検査を行い、もちろん一度も基準超過はなかったのですが、香港政府は依然として日本食品に対する輸入規制措置を維持しているのみならず、7月12日には、輸入規制の強化を計画していることを発表したため、7月21日には自分が李家超行政長官を往訪し、極めて遺憾である旨表明し、再考するよう強く求めたことはご承知のとおりです。現時点でALPS処理水の海洋放出に対して輸入規制を強化しようとしているのは、世界中で香港と中国、マカオのみであることもご承知のとおりですが、我々としては、ここ香港の市民の皆様の誤解や不安を取り除く上で、香港各界各層に多大な影響力をお持ちのメディアの皆様のお力をお借りしたく、本日の説明会を通じて、IAEAの包括報告書及びALPS処理水の取扱や安全性について香港の皆さまの理解が一層深まり、香港の多くの方に引き続き安心して日本食レストラン及び日本産食材を楽しんでいただき、ALPS処理水の放出により良好な日本と香港の関係に深刻な影響が出ることがないようにしたいと考えています。
今回の説明会には、資源エネルギー庁、農林水産省、城市大学、東京電力の専門家が出席しております。皆様からの御質問に、高い透明性、科学的根拠及び誠意を持ってお答えしたいと思います。
今後も、香港の皆様へのご説明や資料を充実させていく考えです。限られた時間ではございますが、どうぞ最後まで、よろしくお願いいたします。
このたびは御多忙の折、東京電力福島第一原子力発電所のALPS処理水の安全性レビューに関するIAEA包括報告書に関する在香港日本総領事館主催説明会に御参加いただき、誠にありがとうございます。
2021年4月に、日本政府はALPS処理水の処分に関する基本方針を発表し、その後、2回にわたって香港のプレスの皆様にALPS処理水に関する説明会を開き、処理水の安全性について、科学的根拠に基づく説明を行って参りました。
残念なことに、香港市民の間では「ALPS処理水」を「汚染水」と誤解するなど、依然として混同が生じており、IAEAの包括報告書発表後も、日本食を楽しんで頂いている香港の皆様の間で不安が広がっていると承知しています。我々としては、引き続き科学的根拠に基づく正確な情報、特に100頁を超えるIAEAの包括報告書の内容につき正確かつ丁寧にお伝えする必要性を改めて痛感しているため、本日は、7月4日にIAEAから公表された包括報告書の概要を経済産業省の宮下参事官にご説明いただき、城市大学の日引教授に科学者の立場からコメントいただきます。それに先だって、わたくしから、IAEAという国際機関の位置づけ及び包括報告書の重要性について、まず簡単にご説明したいと思います。
IAEAという機関は、1956年に中国を含む世界176カ国の合意を得て作成されたIAEA憲章に基づいて活動する機関です。グロッシーIAEA事務局長も述べているとおり、原子力分野ではIAEAが唯一の権限をもつ国際機関です。
IAEA憲章3条6には、「安全上の基準を設定し」、「いずれかの国の要請を受けたときは、その国の原子力の分野におけるいずれかの活動に対して、その基準が適用されるように措置を執ること」と規定されています。つまり、今回のIAEA包括報告書で述べられる「国際的な安全基準」というのは、中国を含む176カ国が同意してIAEAが設定、採用してきた安全基準であり、その安全基準を適用して今回の包括報告書は作成されたものであるということです。
IAEAは本年7月4日に包括報告書を発表し、(1)ALPS処理水の海洋放出は関連の国際安全基準に合致しており、人および環境への影響は無視できる程度である、(2)今後も引き続きIAEAはレビューを続け、福島第一原発に常駐オフィスの設置を行う、と表明しました。IAEAのグロッシー事務局長は、処理水の最後の一滴が安全に放出し終わるまでIAEAは福島にとどまると表明しています。
わたくしからは、もう一点、2011年の原発事故以降の日本政府の努力と国際的な動向についてお話ししたいと思います。原発事故の後、55カ国・地域が日本産食品に対する輸入規制措置を導入しました。日本は、農地の除染、飼育管理などの対策を徹底し、出荷規制により基準値を超過する食品を流通させない体制を構築してきました。このような日本の努力を受けて、7月13日にはEUが規制撤廃を公表し、8月3日付で撤廃されれば、これまでに55カ国・地域のうち44カ国・地域が規制を撤廃することになります。
これとは対照的に香港政府も過去10年以上にわたり77万回の検査を行い、もちろん一度も基準超過はなかったのですが、香港政府は依然として日本食品に対する輸入規制措置を維持しているのみならず、7月12日には、輸入規制の強化を計画していることを発表したため、7月21日には自分が李家超行政長官を往訪し、極めて遺憾である旨表明し、再考するよう強く求めたことはご承知のとおりです。現時点でALPS処理水の海洋放出に対して輸入規制を強化しようとしているのは、世界中で香港と中国、マカオのみであることもご承知のとおりですが、我々としては、ここ香港の市民の皆様の誤解や不安を取り除く上で、香港各界各層に多大な影響力をお持ちのメディアの皆様のお力をお借りしたく、本日の説明会を通じて、IAEAの包括報告書及びALPS処理水の取扱や安全性について香港の皆さまの理解が一層深まり、香港の多くの方に引き続き安心して日本食レストラン及び日本産食材を楽しんでいただき、ALPS処理水の放出により良好な日本と香港の関係に深刻な影響が出ることがないようにしたいと考えています。
今回の説明会には、資源エネルギー庁、農林水産省、城市大学、東京電力の専門家が出席しております。皆様からの御質問に、高い透明性、科学的根拠及び誠意を持ってお答えしたいと思います。
今後も、香港の皆様へのご説明や資料を充実させていく考えです。限られた時間ではございますが、どうぞ最後まで、よろしくお願いいたします。