ALPS処理水の海洋放出から1年以上が経過して、その安全性はますます明白になっています
令和6年11月6日
ALPS処理水の海洋放出から1年以上が経過して、その安全性はますます明白になっています
2023年8月24日にALPS処理水の海洋放出を開始してから1年以上になりますが、時間が経過すればするほど、データ等が積み上がり、その安全性はますます明白になっています。1.ALPS処理水の海洋放出計画の安全性
第一に申し上げたいことは、「ALPS処理水の海洋放出は安全なものである」ということです。海洋放出される水のことを「核汚染水」と記述する文章がいまだに散見されますが、海洋に放出されているのはALPS処理水、すなわちALPS(Advanced Liquid Processing System)という装置を経てトリチウム以外の放射性物質を安全基準を満たすまで浄化し、さらにトリチウムについても安全基準を十分に満たすよう、海水で大幅に希釈された後に放出されるものなので、「核汚染水」ではなく「処理水」であり、人や環境に影響を及ぼすことはない安全なものであることを、ここに改めて強調しておきます。
トリチウムをはじめとした様々な多様な核種の海洋拡散、生物濃縮や長期の蓄積の可能性についても、東京電力は、ALPS処理水の海洋放出に係る放射線環境影響評価(REIA)において、国際的な基準及びガイドラインに沿って入念な評価を行い、国際的なガイドラインに沿って定められている我が国の安全基準内に十分収まることが示されています。原子力分野の国際的権威であるIAEAは、2023年7月に公表した包括報告書において、ALPS処理水の海洋放出は関連の国際安全基準に合致しており、人及び環境への影響は無視できる程度と結論付けました。
2.現実に行われた海洋放出の安全性
第二に、昨年8月から行われている海洋放出自体についても、IAEAはその安全性を認めています。本年3月に訪日したグロッシーIAEA事務局長は、ALPS処理水の海洋放出が国際基準に完全に則り、計画どおり安全に実施されていることを再確認しているほか、本年7月にIAEAが公表したALPS処理水に関する安全性レビューミッションに関する報告書においても、ALPS処理水の海洋放出が安全に行われていることが改めて確認されています。
3.日本と香港・マカオを含むすべてのモニタリングで異常なし
第三に、海洋放出開始から1年以上が経ち、日本やIAEA、香港、マカオを含む第三国が様々なモニタリングや検査を実施していますが、ALPS処理水の海洋放出が安全であることは明らかです。具体的には日本の環境省、水産庁、福島県及び東京電力は、IAEA及び中国、韓国、カナダ等の第三国の研究機関と重層的なモニタリングを実施していますが、これらのモニタリング活動において異常は見つかっておらず、放出される水に含まれるトリチウムを含む放射性物質の濃度は、規制基準をはるかに下回っており、このようなモニタリングの結果はすべて公表されています。
また、水産物中の放射性物質については、我が国が実施したトリチウムの分析結果はすべて検出限界値未満であり、放射性セシウムの分析結果もすべて日本の食品の基準値(100Bq/kg)未満でした。なお、香港及びマカオ側でも日本から輸入される食品等に対して検査が行われていますが、基準値を超えたケースが生じていないのは当然の結果であり(検査結果の詳細は別紙参照)、ALPS処理水の海洋放出が安全であること、更には日本産農林水産物・食品が安全であることは、ますます歴然と、科学的に証明されてきています。
我が国は、海洋放出開始後もモニタリングしたデータを迅速かつ透明性高く公表しており、我が国の海洋及び水産物が安全であることは確認されており、香港政府及びマカオ政府にも迅速かつ適切に提供しています。
4.香港政府・マカオ政府の輸入禁止措置には科学的根拠なし
それにもかかわらず、香港政府及びマカオ政府は、2023年のALPS処理水の海洋放出に伴う日本産農林水産物・食品に対する科学的根拠に基づかない輸入規制措置を実施・維持しており、香港政府は10都県産の水産物の輸入禁止を、マカオ政府は10都県産の水産物、生鮮食品及び動物性食品の輸入禁止を、現在に至るまで継続しています。上述のとおり、ALPS処理水自体の安全性、及び実際に行われている海洋放出の安全性は、原子力分野の国際的権威であるIAEAによって確認されており、また、日本やIAEA、香港、マカオを含む第三国が実施している各種のモニタリングや検査でも何ら異常は見つかっておらず、香港政府及びマカオ政府が今なお実施している、科学的根拠に基づかない輸入規制措置は極めて遺憾であることから、日本政府は即時撤廃を求め続けています。
5.福島原発での最近のいくつかのトラブルは、放出の安全性と直接関係なし
なお、福島原発において漏水をはじめとしたいくつかの事故が生じていることが報道されていますが、当該事案は、ALPSの海洋放出とは直接関係ありません。例えば、本年8月9日に東京電力福島第一原子力発電所2号機の使用済燃料プールにおいて漏水等が生じましたが、当該事案は、ALPSの浄化機能及びALPS処理水の海洋放出とは直接関係ありません。同原子力発電所2号機の原子炉建屋内にて漏洩した水は建屋内に留まっており、海洋を含め外部へ流出していないことが確認されています。また、この水は使用済燃料プールにある燃料棒を冷却するための水であり、ALPS処理水とは別物であり、ALPS処理水の海洋放出に影響はなく、日本政府はIAEAに対しても速やかに報告を行い、IAEAは、ALPS処理水の放出とは無関係であるとのプレスリリースを公表しています。
6.ALPSの装置が有効に作動するか否かは、放出の安全性と直接関係なし
また、ALPS処理水の浄化、希釈装置が長期にわたり継続的かつ有効に作動可能かを日本政府は保証できていない、といった指摘も一部で見られます。
しかし、そもそもALPSで処理した水は、放出前に規制基準を満たすかどうかを確認することとなっており、満たさない場合は放出されません。したがって、ALPSという装置自体が有効に作動しているか否かは放出の安全性とは直接関係がありません。
いずれにしても、ALPS処理水の海洋放出は、設備点検や放出する処理水が規制基準を満たしていることの確認等のプロセスを経て実施していく姿勢に変わりはなく、引き続き、安全確保に万全を期していきます。
7.日中間では、日本産水産物の輸入を着実に回復させるとの認識を共有
ちなみに、現在、中国政府も日本産水産物に対する輸入規制を行っており、これに対し、日本政府はこれまで中国側と複数回にわたる協議を継続し、先般本件について認識の共有に至り、本年9月20日に各々が対外発表を行いました。双方で共有された認識の主な内容は、日本側はIAEAの枠組みの下での現行のモニタリング活動の拡充を歓迎し、中国側は当該モニタリング活動への参加後、科学的根拠に基づいて日本産水産物の輸入を調整し再開することを明確にしたというものです。詳細は下記HPをご覧ください。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/pressit_000001_01181.html
また、同月23日、上川陽子外務大臣(当時)は王毅中国外交部長とニューヨークで会談し、20日に発表された日中両国間で共有された認識を踏まえ、追加的なモニタリングを早期に実施し、規制の撤廃に向けた目に見える進展を確実に示していきたい旨述べました。日本側としては、その関連の情報及び科学的データ等を高い透明性と信頼性をもって迅速かつ適切に香港及びマカオを含む国際社会に提供し続け、香港及びマカオ側が科学的根拠に基づき、我が国の求める規制の即時撤廃に向けしかるべき対応を早期にとるよう求め続けていきます。
(了)
(別紙)日本側、香港側及びマカオ側の検査の概要
※日本側の検査の概要
●東京電力は、以下の通り海水や魚類、海藻類のモニタリングを実施しており、すべての結果が検出限界値未満となっています。
対象 | 場所 | ポイント | 分析対象 | 頻度 |
海水 | 港湾内 | 10 | セシウム134,137 | 毎日 |
10 | トリチウム | 週1回 | ||
港湾外2km圏内 | 2 | セシウム134,137 | 毎日 | |
8 | セシウム134,137 | 週1回 | ||
10 | トリチウム | 週1回 | ||
沿岸20km圏内 | 6 | セシウム134,137 | 週1回 | |
6 | トリチウム | 週1回 | ||
11 | トリチウム | 月1回 | ||
沿岸20km圏外 | 9 | セシウム134,137 | 月1回 | |
9 | トリチウム | 月1回 | ||
魚類 | 沿岸20km圏内 | 11 | セシウム134,137 | 月1回 |
11 | ストロンチウム90 | 年4回 | ||
11 | トリチウム | 月1回 | ||
海藻類 | 港湾内 | 1 | セシウム134,137 | 年3回 |
港湾外20km圏内 | 2 | セシウム134,137 | 年3回 | |
2 | ヨウ素129 | 年3回 | ||
2 | トリチウム | 年3回 |
●海水のモニタリングについては、福島県と環境省も、以下の通り実施しており、すべての結果が検出限界値未満となっています。
実施者 | 場所 | ポイント | 分析 | 頻度 |
福島県 | 放出口周辺2km圏内 | 9 | トリチウムの迅速分析 | 計34回 |
環境省 | 放出口から5km圏内 | 3 | トリチウムの迅速分析 | 計29回 |
●水産物のモニタリングについては、水産庁も、以下の通り実施しており、トリチウムについてはすべて検出限界値未満、セシウムについては食品の基準値(100Bq/kg)未満となっています。
対象 | 検査数 | 分析 |
処理水放出口から数km離れた2地点で、2023年8月以降 |
8種 282検体 |
トリチウムの迅速分析 (2024年9月11日時点) |
北海道から千葉県までの太平洋沿岸で、2022年6月以降 採取された魚類等 |
57種 462検体 |
トリチウムの精密分析 (2024年8月28日時点) |
福島県沖で採取された魚類等 | 3,637件 (2023年度) |
セシウム134,137 |
●経済産業省は、海水や魚類のモニタリング結果について、結果が一目で分かるマーク形式で表示するページを日本語及び英語で公開しています。また、東京電力は、包括的海域モニタリング閲覧システム(ORBS)において、各機関(環境省、水産庁、福島県庁、東京電力)のトリチウムの迅速測定データを地図上に集約し、日本語、英語、中国語(簡体字・繁体字)、韓国語といった多言語で一元的に閲覧できるようにしています。
https://www.monitororbs.jp/ja/
※香港側の検査の概要
2023年8月以来、日本から輸入される食品及び香港で漁獲された水産物について、総計117,000サンプル以上(10月28日現在)の検査を行い、全て合格しています。
※マカオ側の検査の概要
2023年1月以来、日本から輸入される食品について、総計133,000サンプル以上(10月28日現在)の検査を行い、全て合格しています。