ALPS処理水の海洋放出から2年が経過したことに寄せて

令和7年8月29日
ALPS処理水の海洋放出から2年が経過したことに寄せて
 

 2023年8月24日にALPS処理水の海洋放出を開始してから2年になりましたが、ALPS処理水の海洋放出の安全性について、改めてお伝えしたいと思います。
 
1.ALPS処理水の海洋放出計画の安全性
 第一に申し上げたいことは、「ALPS処理水の海洋放出は安全なものである」ということです。海洋放出される水のことを「核汚染水」と記述する文章がいまだに散見されますが、海洋に放出されているのはALPS処理水、すなわちALPS(Advanced Liquid Processing System)という装置を経てトリチウム以外の放射性物質を、安全基準を満たすまで浄化し、さらにトリチウムについても安全基準を十分に満たすよう、海水で大幅に希釈された後に放出されるものです。したがって、「核汚染水」との表現は不適切であり、海洋放出されるALPS処理水は人や環境に影響を及ぼすことはない安全なものであることをここに改めて強調します。原子力分野の国際的権威であるIAEAも、ALPS処理水という用語を使っています。
 海洋放出による人及び環境への影響については、東京電力は、ALPS処理水の海洋放出に係る放射線環境影響評価(REIA)において、国際的な基準及びガイドラインに沿って入念な評価を行い、国際的なガイドラインに沿って定められている我が国の安全基準内に十分収まることが示されています。IAEAは、2023年7月に公表した包括報告書において、ALPS処理水の海洋放出は関連の国際安全基準に合致しており、人及び環境への影響は無視できる程度と結論付けました。
 
2.実際に行われた海洋放出の安全性
 第二に、2023年8月から行われている海洋放出自体についても、IAEAはその安全性を認めています。2025年2月に訪日したグロッシーIAEA事務局長は、ALPS処理水の海洋放出が国際基準に完全に則り、計画どおり安全に実施されていることを再確認しているほか、2025年3月にIAEAが公表したALPS処理水に関する安全性レビューミッションに関する報告書においても、ALPS処理水の海洋放出が安全に行われていることが改めて確認されています。
 日本の環境省、原子力規制庁、水産庁、福島県及び東京電力は、IAEA及び中国、韓国といった周辺国を含む第三国の研究機関と重層的、継続的なモニタリングを実施していますが、これらのモニタリング活動において異常は見つかっておらず、放出される水に含まれるトリチウムを含む放射性物質の濃度は、規制基準をはるかに下回っており、このようなモニタリングの結果はすべて公表されています。
 さらに、水産物中の放射性物質については、我が国が実施したトリチウムの分析結果はすべて検出限界値未満であり、放射性セシウムの分析結果もすべて日本の食品の基準値(100Bq/kg)未満でした。
 ALPS処理水の海洋放出が安全であること、更には日本産農林水産物・食品が安全であることは、ますます歴然と、科学的に証明されてきています。香港・マカオ政府が実施している検査結果のとおり、ALPS処理水の海洋放出後も、日本産食品等の安全性が確認されており、基準値を超えたケースが生じていないのは当然の結果です。
 
3.日中間では、協議を重ねた結果、日本産水産物の輸入が一部解禁
 2024年10月以来、IAEAの枠組みの下での追加的モニタリングの一環として、中国を含む参加国の分析機関による採水等が累次実施され、IAEAは2025年6月、2024年10月に実施された追加的モニタリングの採水における分析結果についての報告書を公表しましたが、この中には「分析機関から提出された結果は、ALPS処理水の海洋放出が人や環境に対して与える影響は無視できるほどであるとする2023年7月のIAEA包括報告書の結論と整合している」という旨が記されています。詳細は下記Webサイトをご覧ください。
https://www.iaea.org/sites/default/files/additional-measures-for-independent-sampling-and-analysis-related-to-discharges-of-alps-treated-water-preliminary-additional-measure-october-2024.pdf
 さらに、中国政府からは、これまで分析が完了したものについて、結果が全て正常であった旨発表されています。
 こうした中、中国による日本産水産物に対する輸入規制に関し、日中当局間で、複数回にわたる協議を継続してきました。その結果、2025年5月、北京で開催された4回目となる技術協議において、日中双方は、中国向けの輸出再開に必要な技術的要件について合意し、2025年6月、中国政府は、日本の一部地域(37道府県)の水産物輸入を回復する旨の公告を発出しました。これにより、日本の輸出関連施設の再登録の手続が開始され、香港とマカオを除いた中国向け輸出が順次再開されることになりました。
 
4.香港政府・マカオ政府の輸入禁止措置に対する日本政府の立場
 香港政府及びマカオ政府については、2023年のALPS処理水の海洋放出に伴う、水産物を含む日本産食品等に対する科学的根拠に基づかない輸入規制措置を実施・維持しており、香港政府は10都県産の水産物の輸入禁止を、マカオ政府は10都県産の水産物、生鮮食品及び動物性食品の輸入禁止を、現在に至るまで継続しています。香港政府及びマカオ政府が今なお実施しているこうした措置について、日本政府は引き続き即時撤廃を求め続けています。
 日本側としては、その関連の情報及び科学的データ等を高い透明性と信頼性をもって迅速かつ適切に香港及びマカオを含む国際社会に提供し続け、香港及びマカオ側が科学的根拠に基づき、我が国の求める規制の即時撤廃に向けしかるべき対応を早期にとるよう求め続けていきます。